夢想庫
気まぐれ書き綴る夢小説もどきの置き場
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とある少女のモノローグ
私は一度死んだ。そう、確かに死んだのだ。
――――けれど今、私は生きている。
私がそのことを思い出したのは小学六年生の時。校庭の鉄棒で逆上がりに失敗して頭を強打したことがきっかけだった。
鉄棒から落ちて気を失った後、私は保健室で目覚めた。誰かが運んでくれたのだろう。しかし、その時の私には状況を理解する余裕などなかった。凄まじい量の情報と記憶が嵐の荒々しい波の如く頭の中に押し寄せたのである。
十二歳の子どもの脳にはありえない『知識』。私ではない者の生まれてから死ぬまでの『記憶』。とくに死ぬ瞬間の主観的記憶は十二歳の子どもにはあまりに も衝撃の強過ぎるものだった。子どもの私にはそれが耐えられずに唐突の記憶と知識の混雑に耐えられず、喚き、暴れ回った。けれど所詮子どもの力、駆けつけ た大人達にいとも簡単に押さえ込まれ病院に運ばれた。
鎮静剤を打たれた後、眠りに落ちた私は夢を見ることによって『知識』と『記憶』の整理を行うことが出来た。
ドラマやマンガなどをより楽しむ為に登場人物達に感情移入するように、ただし『私』が主人公なのだが。
◆ ◇ ◆
どこにでもいる何の変哲もない一人の女の物語。平凡な家庭に生まれ育った彼女は明るく元気で、毎日を家族や友達と楽しく過ごしていた。それは見ていて微笑ましいものだった。
耳障りなクラクションと急ブレーキでタイヤが強く地面を擦り付ける音が響き、強いライトの光を浴びた瞬間、重たい衝撃を受けて跳ね上がった体が宙で弧を 描いてコンクリートの上に叩き付けられた。体にべっとりと纏わり付くのは、自らが流した血。血。血。血。血。血。血。血。血。血。
(あぁっ! 気持ち悪い!!)
不愉快極まりなく、早くソレを拭い取ってスッキリしたかった。なのに体が動かない、言うことを聞いてくれない。
ああ、世界が遠ざかって行く。全てが『私』の体から抜けていくのがわかる。失われていく、全てが、世界が、――――消えていく――――。
『私』は、その時の流れを自分でも驚く程冷静に感じていた。
◆ ◇ ◆
これが『私』の物語が終わった瞬間。そして、私の物語(じんせい)が始まるきっかけだった。
『私』は私で、私は『私』なのだ。なのに『私』は死んで、私が生きている。それらの記憶を材料に『私』が与えた『知識』が一つの答えを導き出した。
(生まれ変わりって、本当にあったんだ)
幽霊だとか怪談だとかUFOだとか都市伝説だとかオカルトだとか超自然現象だとか、そんなものは今までは曖昧で不確定なものでしかなかったのに、今は私がその《曖昧で不確定なモノ》の一つとなってしまった。
実感し、受け入れてしまったあとは簡単だ。始めの錯乱状態も、頭を強打したことによる一時的な記憶の混乱によるものだと診断された。脳検査を集中的にやられたあと異常なしと結果がでればあっさりと病院から解放された。
私が前世の記憶を甦らせたからといって、日常に大きな変化が起きることはなかった。あえて細かくいえば、三十五年間分の記憶のおかげで、今習っている勉 学の先の先を理解しているので成績一気にグーンっと上がって、人格も周りを置いて一足先に成長したぐらいだ。おかげで三学期の成績表はオール二重丸で担任 からのコメントでは「落ち着いた態度で常に周りをまとめてクラスの中心的存在でした」と書かれていた。両親は大喜びだ。
急に私の頭が良くなっても、周りの私に対する態度はほとんど変わることはなかった。
私は、前世のことを誰かに喋るつもりはない。喋ったとしても頭がおかしくなった思われるだけだ。変に注目されるよりも胸の内にしまったまま墓まで持っていくのが妥当だろ。
だからこれは、一生、それこそ死ぬまでの私だけの秘密だ。
2011.04.03 明晰
――――けれど今、私は生きている。
私がそのことを思い出したのは小学六年生の時。校庭の鉄棒で逆上がりに失敗して頭を強打したことがきっかけだった。
鉄棒から落ちて気を失った後、私は保健室で目覚めた。誰かが運んでくれたのだろう。しかし、その時の私には状況を理解する余裕などなかった。凄まじい量の情報と記憶が嵐の荒々しい波の如く頭の中に押し寄せたのである。
十二歳の子どもの脳にはありえない『知識』。私ではない者の生まれてから死ぬまでの『記憶』。とくに死ぬ瞬間の主観的記憶は十二歳の子どもにはあまりに も衝撃の強過ぎるものだった。子どもの私にはそれが耐えられずに唐突の記憶と知識の混雑に耐えられず、喚き、暴れ回った。けれど所詮子どもの力、駆けつけ た大人達にいとも簡単に押さえ込まれ病院に運ばれた。
鎮静剤を打たれた後、眠りに落ちた私は夢を見ることによって『知識』と『記憶』の整理を行うことが出来た。
ドラマやマンガなどをより楽しむ為に登場人物達に感情移入するように、ただし『私』が主人公なのだが。
◆ ◇ ◆
どこにでもいる何の変哲もない一人の女の物語。平凡な家庭に生まれ育った彼女は明るく元気で、毎日を家族や友達と楽しく過ごしていた。それは見ていて微笑ましいものだった。
耳障りなクラクションと急ブレーキでタイヤが強く地面を擦り付ける音が響き、強いライトの光を浴びた瞬間、重たい衝撃を受けて跳ね上がった体が宙で弧を 描いてコンクリートの上に叩き付けられた。体にべっとりと纏わり付くのは、自らが流した血。血。血。血。血。血。血。血。血。血。
(あぁっ! 気持ち悪い!!)
不愉快極まりなく、早くソレを拭い取ってスッキリしたかった。なのに体が動かない、言うことを聞いてくれない。
ああ、世界が遠ざかって行く。全てが『私』の体から抜けていくのがわかる。失われていく、全てが、世界が、――――消えていく――――。
『私』は、その時の流れを自分でも驚く程冷静に感じていた。
◆ ◇ ◆
これが『私』の物語が終わった瞬間。そして、私の物語(じんせい)が始まるきっかけだった。
『私』は私で、私は『私』なのだ。なのに『私』は死んで、私が生きている。それらの記憶を材料に『私』が与えた『知識』が一つの答えを導き出した。
(生まれ変わりって、本当にあったんだ)
幽霊だとか怪談だとかUFOだとか都市伝説だとかオカルトだとか超自然現象だとか、そんなものは今までは曖昧で不確定なものでしかなかったのに、今は私がその《曖昧で不確定なモノ》の一つとなってしまった。
実感し、受け入れてしまったあとは簡単だ。始めの錯乱状態も、頭を強打したことによる一時的な記憶の混乱によるものだと診断された。脳検査を集中的にやられたあと異常なしと結果がでればあっさりと病院から解放された。
私が前世の記憶を甦らせたからといって、日常に大きな変化が起きることはなかった。あえて細かくいえば、三十五年間分の記憶のおかげで、今習っている勉 学の先の先を理解しているので成績一気にグーンっと上がって、人格も周りを置いて一足先に成長したぐらいだ。おかげで三学期の成績表はオール二重丸で担任 からのコメントでは「落ち着いた態度で常に周りをまとめてクラスの中心的存在でした」と書かれていた。両親は大喜びだ。
急に私の頭が良くなっても、周りの私に対する態度はほとんど変わることはなかった。
私は、前世のことを誰かに喋るつもりはない。喋ったとしても頭がおかしくなった思われるだけだ。変に注目されるよりも胸の内にしまったまま墓まで持っていくのが妥当だろ。
だからこれは、一生、それこそ死ぬまでの私だけの秘密だ。
2011.04.03 明晰
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