夢想庫
気まぐれ書き綴る夢小説もどきの置き場
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とある友人A
何度目かの入院のある日。
静雄の病室に静雄の友達がお見舞いにやってきた。
「友達じゃねえ」
「友人じゃなきゃ僕は見舞いに来ないよ。静雄くん」
ランドセルを背負い、果物を片手に見舞いにきたのは、メガネをかけた知的そうな少年だった。
あれ、この子ひょっとして……。と予感する。
「初めまして静雄くんのお母さん。岸谷新羅といいます。いつも静雄くんにはお世話になってます」
「あらあら。ご丁寧にどうも。プリン食べる?」
「いただきます」
岸谷新羅。静雄の腐れ縁の一人。そして静雄と折原臨也の接点となる人物。
響子は歓迎の笑みを浮かべて、静雄のために買ってきていたプリンを冷蔵庫から取り出す。
「俺のプリン?!」
「いっぱい買ってきたから大丈夫よ」
ギロッと新羅を睨みつける静雄を宥め、響子はもう一つプリンを出してやる。
この日響子は有給休暇を取って一日静雄の側にいた。平日であるから幽は当然学校である。
新羅少年はどうやら学校が終わってから来たらしい。
「ああ、そうだ。お母さんちょっと先生と話してくるね。――新羅君、ゆっくりして行ってね」
「はい!」
「いってらしゃい……」
ベットに横たわる息子と、その友人に手を振って病室を出た。
◆ ◇ ◆
響子の足音が遠ざかると、新羅は口を開いた。
「うう~ん? 静雄くんのお母さん、普通の人みたいだね」
「みたいじゃなくて普通なんだよ」
「そうなの? 弟くんも普通なんだよね。遺伝の可能性も考えてみたけど、やっぱり違うのかな……」
新羅はスプーンをくわえながら「どう思う?」と静雄に聞く。
「知るか。それよりお前早く帰れよ」
「冷たいなあ。せっかくお見舞いにきたのに」
「お前がいるとプリンが減る」
「いやいや、どんだけプリン好きなの!?」
右手にギプスを付けているせいで、静雄は左手にスプーンを持ち、不慣れな手つきでプリンをすくう。ゆっくりな動作でプリンを口に運ぶ瞬間、目がとろんっと幸せそうに緩むのを新羅は見ていた。ちなみに本人は無自覚である。
「ところで静雄くん。やっぱり原因究明のために解剖させてくれない」
小学生には不釣り合いな言葉をこぼした新羅は目を輝かせる。聞き慣れたセリフに静雄は相変わらず「いやだ」と突っ撥ねた。
将来、静雄が小学生時代の苦い思いでは何かと聞かれれば、この力と顔を見るたび解剖を口にするこの少年と出会ってしまったことだろ。
新羅は静雄の力を知っても逃げていかない数少ない人間の一人。しかし静雄の体の造りに大変な興味を持ったらしく、静雄は離れないことを喜ぶよりもうウザさの方が増して、どうも友人とは素直に喜べない。
「原因がわかれば君のためにもなると思うんだけど……」
そう言われれば少し悩む。静雄自身がこの力にはもう懲り懲りとしていて、どうにかしたいという気持ちも確かにある。が、しかし、だからといってこの変態に身を任せるというのは大きな不安がある。
「いい。余計なことすんな」
「ええー」
もの凄く不満そうな声を無視して静雄はプリンを食べる。
(……母さんの手作り食いてぇー)
入院食と市販のプリンばかりで、母の手料理が恋しくなった静雄であった。
2011.09.23 明晰
静雄の病室に静雄の友達がお見舞いにやってきた。
「友達じゃねえ」
「友人じゃなきゃ僕は見舞いに来ないよ。静雄くん」
ランドセルを背負い、果物を片手に見舞いにきたのは、メガネをかけた知的そうな少年だった。
あれ、この子ひょっとして……。と予感する。
「初めまして静雄くんのお母さん。岸谷新羅といいます。いつも静雄くんにはお世話になってます」
「あらあら。ご丁寧にどうも。プリン食べる?」
「いただきます」
岸谷新羅。静雄の腐れ縁の一人。そして静雄と折原臨也の接点となる人物。
響子は歓迎の笑みを浮かべて、静雄のために買ってきていたプリンを冷蔵庫から取り出す。
「俺のプリン?!」
「いっぱい買ってきたから大丈夫よ」
ギロッと新羅を睨みつける静雄を宥め、響子はもう一つプリンを出してやる。
この日響子は有給休暇を取って一日静雄の側にいた。平日であるから幽は当然学校である。
新羅少年はどうやら学校が終わってから来たらしい。
「ああ、そうだ。お母さんちょっと先生と話してくるね。――新羅君、ゆっくりして行ってね」
「はい!」
「いってらしゃい……」
ベットに横たわる息子と、その友人に手を振って病室を出た。
◆ ◇ ◆
響子の足音が遠ざかると、新羅は口を開いた。
「うう~ん? 静雄くんのお母さん、普通の人みたいだね」
「みたいじゃなくて普通なんだよ」
「そうなの? 弟くんも普通なんだよね。遺伝の可能性も考えてみたけど、やっぱり違うのかな……」
新羅はスプーンをくわえながら「どう思う?」と静雄に聞く。
「知るか。それよりお前早く帰れよ」
「冷たいなあ。せっかくお見舞いにきたのに」
「お前がいるとプリンが減る」
「いやいや、どんだけプリン好きなの!?」
右手にギプスを付けているせいで、静雄は左手にスプーンを持ち、不慣れな手つきでプリンをすくう。ゆっくりな動作でプリンを口に運ぶ瞬間、目がとろんっと幸せそうに緩むのを新羅は見ていた。ちなみに本人は無自覚である。
「ところで静雄くん。やっぱり原因究明のために解剖させてくれない」
小学生には不釣り合いな言葉をこぼした新羅は目を輝かせる。聞き慣れたセリフに静雄は相変わらず「いやだ」と突っ撥ねた。
将来、静雄が小学生時代の苦い思いでは何かと聞かれれば、この力と顔を見るたび解剖を口にするこの少年と出会ってしまったことだろ。
新羅は静雄の力を知っても逃げていかない数少ない人間の一人。しかし静雄の体の造りに大変な興味を持ったらしく、静雄は離れないことを喜ぶよりもうウザさの方が増して、どうも友人とは素直に喜べない。
「原因がわかれば君のためにもなると思うんだけど……」
そう言われれば少し悩む。静雄自身がこの力にはもう懲り懲りとしていて、どうにかしたいという気持ちも確かにある。が、しかし、だからといってこの変態に身を任せるというのは大きな不安がある。
「いい。余計なことすんな」
「ええー」
もの凄く不満そうな声を無視して静雄はプリンを食べる。
(……母さんの手作り食いてぇー)
入院食と市販のプリンばかりで、母の手料理が恋しくなった静雄であった。
2011.09.23 明晰
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